

●最強コンビ、10年ぶりの再会
- 竹村
- 今日はお2人とも本当に久しぶりにお会いになられたと伺っていますが。
- 川西
- 久しぶりですね、10年弱くらいになるかな。

- 竹村
- 最初にお知り合いになってからはどれくらい経ちますか。
- 川西
- 21、22年というところでしょうか。僕は今も社員研修という形で、企業のお手伝いをさせていただいています。
- スキナー
- 私は、セミナーと執筆活動が中心ですね。自分の書いた『成功の9ステップ』(幻冬舎)を使って、個人対象のセミナー事業をメインにやらせていただいています。
- 竹村
- 何と申しましても、お2人は、7つの習慣の研修を初めて日本に導入し、書籍『7つの習慣 成功には原則があった!』(キングベアー出版)日本語版の翻訳・編集・デザイン・広告宣伝・出版のすべてを手掛けたチームです。それをベースに、フランクリン・コヴィー・ジャパンでは私もご一緒させていただいて、さまざまなサービスを提供してまいりました。その後、お2人は退社されて、ジェームスさんはマーケットを開拓しながら個人向けのサービスを、川西さんのほうは『7つの習慣』とともに、ご自身の独自のサービスを提供していらっしゃる。お2人のご活躍ぶりは素晴らしいですね。
- スキナー
- 仕事しませんとね、たまには(笑)。
●「探していたもの、見つけたー!」
- 竹村
- まず、お2人の出会いについて、伺わせてください。
- スキナー
- 川西さんとは本当に感動的な出会いでした。お互いに洋上研修のインストラクターを頼まれて、船でたまたま同室になったんです。
- 川西
- 本当にたまたまでしたね。
- スキナー
- 船が東京を出て香港に着く頃には、いつか一緒に会社をやりたい、事業を一緒にやりたい、という話になっていました。で、何をしようか、それを探そうということで、韓国に行ったりアメリカに行ったり、2人でいろいろなところに出かけては「何かいいものはないか」と探していたんです。
そんな折、帝国ホテルの中に洋書専門の小さな本屋がありまして、そこで私がたまたま見かけたのが「The 7 Habits of Highly Effective People」、『7つの習慣』の原書だったんですね。
著者のスティーブン・R・コヴィー博士って、どこかで聞いたことがあるなと。私が出た大学の教授だったことに、後から気づきました。当時の私は広告の仕事をやっていて、いつも締め切りに追われていたので、時間管理というものに興味を感じたんです。それでその本を買って読み始めたら、あまりにも大きな衝撃で、すぐ川西さんに電話を入れました。「我々が探していたもの、見つけたー!」って。そうしたら、川西さん、本当にすごいですよ。「あなたがそうだって言うなら、そうに違いない、やろう」って(笑)。
- 川西
- そのとき、僕は四国・高松で電力会社に勤めていたんです。夜8時くらいだったかな、彼から電話がかかってきて、「すごいのがあるよ、見つけた!」って興奮しているわけですよ。それが『7つの習慣』で、アメリカでは研修事業もうまくいっていて、本を読んだら内容もいいから、と。「それ、日本でやってるのかな?」と聞いたら、「いや、わからない」って言うから、「ちょっと問い合わせてくれ」となって。その後、「日本ではやってないらしいよ」「それなら僕らがやるんでしょうね」ということになって(笑)。1か月くらい先にアメリカでコヴィー博士のセミナーがあるとわかったので、「どうする?」「行くんでしょ!」「じゃあ、行きましょう!」となったんです。

- スキナー
- 我々がすごいと思うのは、アメリカに行く前に、もう7つの習慣の事業を日本で展開するための会社を興しちゃったこと。やらせてもらえるかどうかもわからない時点で、もう創業しちゃってるんですから(笑)。
●タンポポ探し@香港
- 竹村
- お2人は意思決定のスピードが尋常じゃありませんね(笑)。
- 川西
- 何をやるのかも決めてなかったのにね(笑)。でも、2人で何かを一緒にやりたいってところが重要だったので。僕たちが強くそう考えるきっかけになったエピソードがあるんですよ。
- スキナー
- 「タンポポ探し」ですね。川西さんと出会った船の中で、いろいろお世話になったスタッフがいまして。彼女に何か恩返しをしたいということで、香港に着いたら花でも買って贈ろうと、彼女に「どういう花がお好きですか」と聞いたら、「タンポポが好き」って言う。さすがに花屋でタンポポを売っているわけがないでしょう。500回くらいは香港に行ったという人がいたので「香港にタンポポって生えてるかな」って聞いたら、「あんなコンクリートで固まったジャングルにあるわけないでしょ」と。

それで諦めかけたんですけど、ちょっと待てよ、それは違うんじゃないかと。我々はタンポポがあるから、タンポポを探しに行くんじゃない。タンポポを探しに行こうと思ったから、行くんじゃないのと。自分の思ったことを実行に移すというのが、我々の趣旨じゃないのって。じゃあ、なくてもいいから、探しに行こうよ、ということになって、香港に上陸してタンポポを探しに行きました。
- 川西
- 行ったね~(笑)。
- スキナー
- もちろん、なかなか見つからないんですけど、足下を見て歩く香港はすごく楽しかった。タンポポを探していなければ、見られない香港がありました。
- 川西
- 裏のさびれた路地とか、ややこしいところに入っていってね。
- スキナー
- 普通だったら避けるんだけど、こういうところにこそタンポポがありそうじゃない? とか言って。
- 川西
- バスに乗って、離れた町にも足を延ばして。バスの中で彼が寅さんの歌を歌ったら、日本からの観光客と友達になっちゃったり。けっこう楽しかったね、あれ。
- スキナー
- で、半日くらい経っても見つからないから、タンポポの形をしたものなら何でもいいことにしたんです。服の柄でもジュエリーでも。それでも見つからなくて、もう帰ろうかって話になって。でも、ちょっと待てよと。営業の世界には「あと1軒」という言葉があって、仕事を切り上げようと思ったとき、最後にあと1軒だけ門を叩く営業マンが成功するということを学んでいましたから。もう1回だけと思って、目の前の道を渡って右に曲がったら、そこにタンポポが咲いていた。
- 川西
- 大きな並木道の下のほうに黄色い花が群生していて。「ちょっと、あれ何だよ」「わからないよ」「行こう」って走って行ったら、香港の専門家が生えてないと断言したはずのタンポポがいーっぱい咲いていた。「目の前にあるじゃん!
俺たち、これだよ!」って。
- スキナー
- そのときにね、彼と一緒に会社をつくることに決めたんですよ。こういう間柄だったら、うまくいかないわけがないって。
- 竹村
- 面白いですねえ。
●とにかく自分の足で一歩を踏み出してみる
- 川西
- タンポポを摘んで小さな花束にして渡したら、彼女も満面の笑顔で感動してくれて。日本に帰ったら、こんなふうに人様に感動していただけるような仕事をしたいよねって。だから、何をするって決めたわけじゃなくても、日本に帰ったら一緒に会社をつくろうと約束したんです。

- スキナー
- そうしたら『7つの習慣』の原書に出会って、自分も感動したので、この感動を人にも伝えたいって思ったんです。
- 川西
- ただ、お互いに人生を賭けることになるわけですから、本当に信頼できる友でいられるか、半年間、期間を置くことにしました。その間にいろいろ約束をして、それをお互いに全部守れるか、チャレンジしてみたんです。そうしたら、2人とも全部守れたので、これだったら間違いないなということで、登記したわけです。
- 竹村
- お2人にとってタンポポというのは1つの夢であり……
- スキナー
- 哲学なんですよ。
- 川西
- 普段の生活の中で、いろいろ詳しそうな人から話を聞いて「ない」と言われたら、そのまま信じて行動せずに諦めてしまいがちだけど、それって違うよね、と。とにかく一歩を踏み出してみたら、全く違う世界が見えるんじゃないかという、僕らなりの人生哲学をそこで得たわけです。
- 竹村
- そこに至る体験を共有できたというのは、特別なご縁ですよね。その後、まずジェームスさんが『7つの習慣』に出会われて。『7つの習慣』のどこにそれほどのインパクトを感じたのでしょうか。

- スキナー
- 一番はミッションです。あの本は「読んだ」というよりは「やった」という感覚で。「こういうことやってみてください」って書いてあるところは、全部その場でやりました。第二の習慣では「ミッション・ステートメント」も書きましたよ。自分の人生で本当は何をしたかったのか。すると、小さい頃からずっと、人に何かを教えて、その人が今までわからなかったものがわかるようになったり、できなかったことができるようになったときの顔を見るのがうれしかった。それがやっぱり出てくるんですよね。
当時の仕事では、それができているとは思えなかった。3日間考えて、やっていた会社を手放すことを決めて、じゃあ何を教えるのか迷っているとき、目の前に『7つの習慣』の本があって。「あ、ここにあるじゃないか」と。それで、ここからスタートしようと思ったんです。
- 竹村
- それで四国にいる川西さんに電話をしたわけですね。
- 川西
- 僕は、『7つの習慣』というのを初めて聞いたわけで、彼からちょっと説明を受けたくらいではわからない。でも、彼がいいって言うんだから……
- 竹村
- まず、信じてみようと。
- スキナー
- 6か月の信頼関係がありますからね(笑)。