第10回 会社の財産になる(2)

前回に引き続き、「会社の財産になる」の2回目です。今回は、「なぜあなたは今の会社で働いているのか?」「自分の仕事はどのように部門や組織に貢献しているか?」「自分の仕事は人間として自分が成長する上でどのように役立っているか?」という問いに答えるべく演習を行いましょう。

●3. なぜここで働いているのか?

あなたはなぜここで働いているのでしょうか。あなたの持つ能力や才能が現在の組織が求めるものに合致していたからでしょうか。それとも、現在の組織の持つ価値観やビジョンに深い共感を覚えたからでしょうか。あなたが現在の組織で働きたいと強く思う理由は何でしょうか。
また、あなたはどのような仕事をしているときに、自分自身の存在意義を感じることができますか?
例を参考に考えてみましょう。

例)大学で学んだサプライ・チェーン・マネジメントに関する知識を活かすため、そして人とのコミュニケーション能力を発揮するためにここにいる。全社の戦略立案にかかわる仕事に情熱を感じる。(25歳、流通管理会社勤務、戦略立案部)

●4. 自分の仕事はどのように部門や組織に貢献しているか?

あなたの部門が全体の組織にどのように貢献できているのかを考えると同時に、あなた個人が、その部門に対し、どのような貢献をするために存在するのかを考えます。あなたは何をもって今の部門に存在しているのでしょうか。あなたのどのような才能や能力が、あなたの部門が出す成果に結びつくのでしょうか。
例を参考に考えてみましょう。

例)新規加入者が会員登録時に入力するデータの解析を常に行っている。商品開発において欠かせないデータとなっており、新商品の開発戦略に役立っている。これからはそうした分析に独自の見解を入れていきたい。(23歳、化粧品メーカー勤務、マーケティング部)

●5. 自分の仕事は人間として自分が成長する上でどのように役立っているか?

これはあなたのミッションがどういったものかという質問です。あなたの仕事はあなたのミッションに則しているでしょうか。ミッション・ステートメントを書き出し、確認してみましょう。
もしまだミッション・ステートメントを作成していないようであれば、このコーナーの第1回、第2回を参考にして作成に取り組んでみましょう。

例)私は自分の真の才能を発掘し、それを伸ばし、将来は世界に役立たせることを誓う。そのために身につけなければならない原則やスキルを若いうちに徹底的に身につけよう。どんな仕事もいとわずに請け負う、なぜならそれらはすべて成長するチャンスなのだから。(26歳、食品メーカー勤務、営業職)

●青木さんの例(後編)

前回の冒頭で紹介した紹介した青木さんの例の後半です。彼女は前回、同僚の池田さんに「目的を見失ってしまった」と相談し、あなたがここまでに答えた質問と同じ質問に取り組みました。彼女はどのように変化したのでしょうか。

次の日彼女は、上司の北本さんに、自分が作成したデータを会社の経営陣がどのように利用しているか教えてほしいと頼みました。北本さんは青木さんがそのことを全く知らされていなかったことに驚き、作成したデータは会社の業績の予測や展望に不可欠なものであるということを説明しました。
北本さんと話した後、青木さんは自分の活動を評価してみることに決めました。自分の仕事が会社の全体的なミッションに貢献していることを確認したいと思ったのです。自分の作成したデータが、会社の業績予測や展望にとって重要な要素であったことを知り、時間つぶしをやめ、報告書づくりを自分の最優先事項とするようにしました。また、報告書を改善し、経営トップのニーズに本当に役立つようなデータを選り分ける方法に関してもいくつかの提案をするなど、もっと貢献できる方法も探し始めました。自分の活動を会社の目的にリンクさせることによって、彼女自身が会社のかけがえのない財産になっていったのです。

●会社の財産であるということ

組織で活躍し続ける秘訣の1つは、会社のミッションに対して目に見える影響を与えること。これができる社員は会社の財産といえます。もしあなたが変化を生み出す能力を身につけたなら、どこで働こうとも、あなたは引っ張りだこでしょう。
私たちの組織で働く1人ひとりが、もし1つに団結すれば、大きな相乗効果を生み出すことでしょう。そのためには全員が「なぜ自分は仕事をするのか」を明確にし、より大きな目標にコミットする必要があります。