前回に引き続き、危機への対処について考えていきます。前回、緊急事項が発生し、あなたの対応を迫られた際に、以下の3ステップを提案しました。
- 理解するために聞く
- 評価する
- 決定を行動に移す
今回は【2.評価する】よりスタートします。プロローグと【1.理解するために聞く】は、前回のオンライン・トレーニング「第15回 危機的状況に対応する(1)理解するために聞く」をご参照ください。
【2.評価する】
自分に以下の問いかけをして、その問題を自分が真の危機であると考えるかどうかを素早く決定します。
- 今これをする必要があるのか?
- そもそもこれをする必要はあるのか?
- この活動/タスクは、仕事上の重要な目的の達成に役立つのか?
もしあなたがこれらの質問に、すべてイエスと答えることができるなら、その緊急の状況はあなたにとって重要なものです。もしあなたが以下の問いにもイエスと答えられるなら、この状況は危機である可能性が高いといえます。
- このタスクを遂行しない場合、自分の最優先事項を遂行しなかった場合に比べて、もっと悪い結果につながる可能性があるといえるだろうか?
注意していただきたいポイントは、【2.評価する】の前に【1.理解するために聞く】を行うという点です。『7つの習慣 成功には原則があった!』の「第五の習慣 理解してから理解される」では、相手の事情を理解しようとせず、自身の過去の経験に基づいて理解しようとすることを「自叙伝的に聴く」とし、そういった聴き方は以下の4つのいずれかであり、こういった形の傾聴はかえって侮辱となるだろうと指摘しています。
- 評価する:賛成、もしくは反対する
- 探る:自分の視点から質問する
- 助言する:自分の経験に基づき、助言やアドバイスを与える
- 解釈する:自分の動機や行動をもとに相手の動機や行動を捉え、解釈し、説明しようとする
【2.評価する】を【1.理解するために聞く】の前に行ってはいけません。
【3.決定を実行に移す】
あなたが今何をするかは、他の最優先事項との関連上、その問題をどう評価したかに左右されます。もしその状況が危機であると考えているのなら、
- 危機に対応する時間をつくるためにスケジュールの優先順位づけをやりなおしましょう。その問題の優先順位があなたの他のタスクより高いということを再度確認してください
- そのタスクを完了して、なおかつ自分のその他の責任も全うする方法を考えてみましょう。残業する必要があるでしょうか。あるタスクを明日に先送りすることが可能かもしれません。またタスクを誰かに委任する方法も有ります。むしろ委任したほうが的確という状況もあり得るはずです。
もしその状況が危機であると思わないのなら、
- 丁重に自分の気持ちを伝え、あなたの他の最優先事項との関連上、あなたがその問題についてどう認識しているかを相手が理解できるように説明します。たとえば、「あなたのお手伝いしたいのはやまやまですが、そうするためには今日あなたのためにするとお約束していたことを延期しなければならないのです」、あるいは「私を頼りにしてくださってありがとう。でも、今はご希望に添えないのです」などということができます。
- あなたの関与を延期するか、第三者にその事態の処理を委任しようとする場合は、周到かつ慎重に行動しましょう。たとえば、「自分の仕事で手一杯なので、今すぐその問題にかかることができる状態ではないのですが、あなたのお手伝いができる人なら心当たりがあります」ということができます。
危機の際にどう行動したらいいか注意深く検討することによって、危機に立ち向かいそれを処理する態勢を整えるか、そつなく危機を避けて新たなストレスが加わるのを避けるか、そのどちらかは可能になるはずです。
【次のステップ】
あなたの1日はすでに自分で慎重に計画した重要タスクで一杯です。職場において危機的状況を完全に回避することを期待してはいけません。しかし、誰かがあなたに「大きな」問題を突きつけるたびに、「聞く、評価する、決定を実行する」のクイック・プロセスを用いることで、自分の個人的生産性に与える影響を最小限に抑えることはできます。
より効果的に危機を処理するためのプロセスをせっかく学んだのですから、危機的状況が次回巡ってきたときには、ぜひこのプロセスを使ってみましょう。問題を十分に理解できるようしっかりと耳を傾け、自分の時間と専門知識が本当に必要とされているかどうかを評価し、その上で出した結論に基づいてすぐ行動に移します。
自分自身の「危機」について職場の誰かの手を煩わせる必要が生じる場合も時にはあるでしょう。そういう場合には、あなたのニーズを相手に明確に説明してください。もし相手の反応が芳しくないようであれば、なんらかの判断を下す前に相手の見方や優先事項を理解するように努めましょう。
また、職場やプライベートでの危機に対応するために、頻繁に支援を必要としている人に対して、この簡単なプロセスを教え、お互いに習得するためにロール・プレイを行うこともお勧めします。「学ぶための最善の方法は、教えることだ」とは、コヴィー博士の言葉です。