今回は、自分に降りかかるさまざまな出来事に対し、ストレスなく、効果的にどのように対応していくかという点について考えてみましょう。まずは外部からの刺激に対して、腹を立てている、4人の例をご覧ください。
●4人のエピソード
- 1. 一之瀬さんの場合
- 今日も遅刻してしまった。私は自宅から3つの電車を乗り継いで通勤しているのだが、しょっちゅう2つ目の電車が遅延する。おかげで余裕を見て家を出ても、出社時間には間に合わないケースが多々ある。そしてそれは今日もだった。毎度おなじみの、車掌の言い訳を聞くたびにうんざりする。
- 2. 岸川さんの場合
- 私は今年から管理職となり、念願の部下を持つことができた。その部下は新入社員なのだが、仕事ができないのなんのって! 毎度同じようなミスばっかりして…。何度いっても直らない。先日も尻拭いをさせられた。自分が新入社員だった頃ももちろん失敗はしたけど、さすがにこんなにはひどくなかったと思うなぁ。正直やってられないよ。
- 3. 梅津さんの場合
- 新卒で今年入社した梅津です。私の上司のおかしな話を聞いてください。上司と3ヶ月前面談して、そろそろ入社して半年たつのだから、どこかプロジェクトに入れてくれと頼んだのです。上司も意欲的な私を見て、ありがとうといってくれました。私は面談の手ごたえを得ました。そして先週、新たなプロジェクトの人員配置が発表されたところ、私ではなく同期の1人がプロジェクトメンバーに選ばれていたのです。私のほうが情熱も能力もあるのに・・・・納得いかない!
- 4. あなたの場合
- さあ、4人目はあなたです。あなたが体験した「腹の立つエピソード」を思い出してください。
●コントロールできる領域に主体的に取り組む
彼らは口々にこう叫びます。
「私は悪くありません!悪いのは(電車/部下/上司)なんですよ!」
確かにそうかもしれません。
しかし大切なのは、あなたがコントロールできる領域に主体的に取り組むことです。そうすれば、より多くの事柄に自分の影響を広げることができます。自分のコントロールを超える状況があるということを認識することで、先ほどのような状況を受け入れ、対応策を考えることができるようになります。
先ほどの一之瀬さんですが、いつも電車にトラブルがあるたびにイライラして、その日1日中、仕事に集中できないときもあるそうです。
同様に岸川さんも、部下にトラブルがあるたびにイライラ。ちょっとしたミスでもすごい剣幕で叱ってしまい、心の中では「俺は部下に嫌われているだろうな」と感じているそうです。
しかし電車や部下や上司に対して、そうした反応をすることで、何かよい影響を与えることができるものでしょうか?
●コントロールの連続体
以下の「コントロールの連続体」は、何が自分のコントロール下にあり、何がそうでないかを判断する上で役立つモデルです。左側の出来事に対しては、あなたはほとんど、あるいは全くコントロールできません。右側の出来事はコントロールすることができます。コントロール可能な出来事とコントロール不可能な出来事の間が、影響を与えることのできる状況です。
コントロールの連続体
天気や交通、他の人の機嫌や状況は、あなたがコントロールすることは不可能です。あなたが確実にコントロールすることができるのは、あなたの考え、あなたの行動だけなのです。外部からの刺激に対し、腹を立てるのか、怒鳴るのか、あなたがコントロールして選択することができるのです。つまり、あなたが怒るとき、あなたはわざわざ「腹を立てる」ことを選択しているわけです。
時には、実際には影響を与えられる出来事に対して、自分には全くコントロールできないと判断してしまうこともあります。たとえば、先ほどの一之瀬さんの話を振り返ると、オフピーク通勤も兼ねて、始発近くに家を出て出社してみるというのはどうでしょう。電車も空いていますし、朝のオフィスは人も少なく、スキルアップのための勉強なども捗ることでしょう。このように電車の運行状況はコントロールできませんが、あなたの選択によってリスクは緩和できるのです。
自分では全くコントロールできない状況に直面してしまった場合も、「コントロールの連続体」の考え方を活用して、選択肢をあなたなりに評価することで、前向き、かつ効果的に対応する方法を決めることができます。