●いかにしてノーを伝えるか
前回はノーと伝えることの大切さと伝えられない理由について考えました。今回はいかにして伝えるかを考えていきます。
ノーと伝えられない原因は、ノーを伝えることに不安があるから、そしてその不安はノーというためのよい計画がないためだと考えられます。ノーということで、人間関係にひびが入ったり、悪い印象を与えてしまったりするのではないかと考えてしまうのです。
次の3ステップを使えば、あなたは心の傷や罪悪感、誤解を生む機会を極力減らすことができるでしょう。
- 要請の内容を理解する
- 効果的にコミュニケーションをとる
- 肯定的な印象を与える
1.要請の内容を理解する
聞きたくないという理由はよくわかります。あなたが作業中であればなおさらです。しかし部下が話していることを聞いてもらえていないと感じたら、あなたへの信頼や部下の不安感はどのようになってしまうでしょうか? あなたへの信頼は低下し、部下への不安感はますます大きくなるばかりです。
早合点したり、感情的な決定を下したり、あるいは頼まれ事に耳を貸さないというような態度をとることは避けてください。その問題とその意味合いを本当に理解するために時間をかけてください。「7つの習慣:第五の習慣」は「理解してから理解される」なのです。
具体的には以下のような選択を提案します。
- 約束すべきかどうかわからない場合、とりあえずイエスかノーのどちらかの返事をして済ませようとしない。判断に時間が必要なので、後で連絡すると相手に伝える
- 要請内容の意味合いがよく理解できない場合、常にその真意を明確にするよう相手に求める
2.効果的にコミュニケーションをとる
ノーといわなければならないときは、あなたのメッセージがきちんと相手に伝わるよう努めます。弁解しているように聞こえたり、優柔不断であるような印象を与えたりすると、あなたの真意は伝わりません。あなたがノーを選択するために割いたエネルギーも台無しになってしまいます。
効果的にコミュニケーションをとるために、具体的には以下のことを試してみましょう、
- 「ちょっとできそうにない」といったあいまいな返事の代わりにノーという
- 「できない」あるいは「するべきではない」という代わりに、「しない」あるいは「しないことに決めた」という
- 説明をする際は、率直かつ簡潔に。長々しい言い訳、説明は不要
- いわゆるボディランゲージに注意する。無意識にうなずいたり、微笑したり、何か他の複雑なメッセージを発信せずに、自分の首を左右に振って自分のノーという返事を強調する
- 必要とあらば、何度でも断るという覚悟を持つ。毎回、新たな説明や弁明を始めない
- 話し合いを「終わらせ」たり、ポイントを明確にする手段として、沈黙を使う必要が生じる場合もある
3.肯定的な印象を与える
今日断らなければならない相手が、こんどは明日あなたが救いを求める相手になるかもしれません。断らねばならない人との間に強固な関係が築かれていない場合、あなたの真意を説明する必要があるかもしれません。前にも書きましたが、長い説明や詳しい理由づけは誤解を与えかねません。ですから、相手が本当のところ理解したいのはどんなことなのか察知する努力が必要なのです。状況に気を配り、正直に、率直に対応するようにしてください。
下の表に、ノーといった場合に想定される相手の受け止め方(認識、見方)やそれに対する解決策をまとめました。
あなたが拒否した場合に想定される相手の受け止め方(認識、見方) |
あなたが要請者に理解してもらいたいこと |
認識の転換をどう達成するか |
あなたが要請を拒否することは、要請をした自分を拒絶することでもある。 |
あなたの決断は、要請をした人とは何の関係もない。 |
なぜ要請に応じられないのか、その理由を明確にする。自分が断ったことによって要請者にかけてしまうかもしれない迷惑に対しては、必ず本人に直接謝るようにする。そして、次に問題が起こったときはまた相談しにきてほしいと伝える。 |
要請を断ったのは、あなたがそれに関心がないか、それがあなたにとって何の価値もないことだからである。 |
要請そのものは評価しているし、その重要性もわかる。しかし、もっと優先順位の高いことか、あるいはもっと大規模な案件に取り組んでいるところなのだ。 |
要請を断った理由は、あなたがそれをやりたくないからではなく、すでにもっと大規模なプロジェクトに取りかかっているからだということをはっきり伝える。そのプロジェクトに対して大きな責任を負っているため、要請に応じることはたとえ後日ということであっても、不可能であることを説明する。 |
あなたの拒否は絶対である。 |
その要請には関心があり、自分にも何か手助けができるかもしれないとは思うが、とにかく今現在は手伝えない。 |
今は時間があまり空かないので支援できる状況にないが、後日参入できるかもしれない旨を説明する。できれば、その時期を明示し、それで問題が解決できるか聞いてみる。 |
あなたは反抗的だ(上司から要請された場合)。 |
この仕事を引き受けてしまうと、上司から前に与えられた他の仕事に影響が出てしまう。 |
上司に対して仕事を引き受けたいという意欲を表明する一方、その新たな要請を踏まえて、今抱えているどの仕事(1つあるいは複数)を中断してもいいか、明確にしてくれるように求める。 |
あなたの拒否は条件反射的な反応だった。要請について何も考えてくれなかった。 |
要請がどういう性質のものかはわかっているが、他の正当な理由があって引き受けることができない。 |
他の要因で引き受けることが不可能であると思っていたとしても、返事をする前に2、3質問をして要件を確認する。まず相手を理解してから、慎重に返事をする。 |
●あなたの課題にアプローチする
前回の演習において、あなたがノーといえない理由を挙げてみました。その理由は上に挙げた、認識の転換を用いることで、ノーということができるでしょうか?
明日オフィスに着いたら、さっそく上司があなたに依頼をしてきました。あなたはすでにその上司や他の同僚から受けた仕事で手一杯です。あなたならどのようにノーを伝えますか? できるだけ具体的に考えましょう。
ノーを伝える技術は、経験を積むことで上達します。ですから、今回学んだ、「認識を転換する」ことを頭に入れ、対応しましょう。将来的にはきっとあなたとその人の間に信頼関係が生まれるでしょう。