「ほとんどの人の視界から信頼が隠れている」とはスティーブン・M・R・コヴィーの言葉です。あらゆる人間関係、組織、交流、人生の瞬間において、信頼の影響が及んでいないことをわかっていない、と彼は指摘しています。
たとえばビジネスにおける結果には何が作用しているでしょうか。次のような式が成り立つでしょう。
戦略[strategy]×実行[execution]=結果[result]
しかし、彼は以下に示すように、信頼が大きくかかわってくるといいます。
(戦略[strategy]×実行[execution])×信頼[trust]=結果[result]
戦略と実行が優れていても、信頼関係が構築されていないが故に失敗に至ってしまうケースは後を絶ちません。前項で述べた、ウォーレン・バフェット氏のようなスケールの大きなビジネスを私たちが現実に行うことはできませんが、優れた戦略であるにもかかわらず失敗してしまった経験は誰でもあるでしょう。
「高い信頼がお粗末な戦略を救うとは限らないが、低い信頼はほぼ間違いなく優れた戦略を挫折させる」とスティーブン・M・R・コヴィーは語っています。
この隠れた変数の強力さを物語る統計を紹介しましょう。アメリカの経営コンサルタント会社である、ワトソン・ワイアット社の調査結果で、高信頼組織では株主への配当が低信頼組織の3倍近くになるとしています。
つまり、信頼はビジネスの成功を左右する最大の要因の1つであるといえます。しかし現実はどうでしょうか。ビジネスに信頼が大きく影響していることを忘れ、戦略と実行にのみフォーカスしてしまっていることはありませんか。
あらゆる利害関係者との関係において、「信頼」は、今後のビジネスにおける最重要課題の1つであるといっても過言ではないでしょう。
以下は、『スピード・オブ・トラスト』で紹介されている、低信頼/高信頼の組織と個人的な関係における特徴です。あなた個人、あるいはあなたの組織は、周囲との関係において低信頼/高信頼どちらでしょうか。図を見て考えてみましょう。
- あなたが経験した、もしくは知っているビジネスにおいて、高い信頼が戦略や実行における失敗をカバーしたケースを思い出してみましょう。
- あなたが仕事をする上で、いつもうまくいくと感じている企業や個人はいますか? なぜいつもうまくいくのでしょうか? 考えてみてください。
- 逆に、あまり仕事がうまくはかどらない、組織や個人はいますか? なぜいつもうまくいかないのでしょうか?