ビジネス・パーソンのための信頼構築講座 第21回【信頼されるリーダーの13の行動】 (9)期待を明確にする

今回は「信頼されるリーダーの13の行動」の9番目、「期待を明確にする」です。「期待を明確にする」とは、何をなすべきか前もって考えを統一することです。

それでは初めに、あなたの現状を評価してみましょう。あなたが、普段から期待を明確にして、きちんと相手に説明していれば10点、逆の行動や偽りの行動が多ければ多いほど0点に近くなります。自分の言動を振り返って、点数をつけてください。

行動

逆の行動、偽りの行動

現在の成績

期待を明確にする

  • 期待を勝手に解釈するか、明確に示さない
  • 不明確で一貫性のない期待を示す

/10点

「期待を明確にする」とは

第18回の「結果を出す」で少し紹介しましたが、結果を出しているのに評価されなかったり、パフォーマンスが低かったりする原因は、たいてい何を期待しているのか事前にはっきりさせておかなかったことにあります。職場や家庭で、「そんな話は聞いていない」とか、「それはあなたがする仕事だと思っていた」といった理由で、多くの時間と労力が浪費されてしまうのです。したがって、期待を明確にすることは、予防の行動だということもできるでしょう。これを怠ると、後で胸や頭が痛くなることになり、信頼を失い、それがスピードとコストに影響を与えることになるのです。

「期待を明確にする」という行動の根底には、明快さ、責任、そしてアカウンタビリティの原則があります。逆の行動は、期待を曖昧にしておくことです。自分が何を期待しているか相手もわかっているはずだと思い込んだり、認識を共有するのを怠ったりすると、それぞれの期待は違ったものになり、評価に値しない結果が生み出され、信頼、スピード、コストすべての面で打撃を受けてしまいます。偽りの行動は、巧妙にごまかすことです。たとえば、期待を明確にすると言いながら、結果、期限、報奨などの具体事項を曖昧にしていたり、その時々の都合で期待を上げ下げする、などといったことです。。

「期待を明確にする」ことが大切なのは、人と人がかかわり合うときは、それが明確であろうと暗示的であろうと、また理解されようがされまいが、必ずそこに期待が存在するからです。そして、その期待がどの程度満たされるか、あるいは裏切られるか、それが信頼に大きく影響するのです。

どうやって実行するか

仕事上で「期待を明確にする」には、やはり契約書などの書面をきちんと取り交わすことが有効でしょう。契約書は双方の期待を特定して明確にします。その結果、信頼が維持され、強化されもするものです。

「期待を明確にする」行動は、職場だけでなく家庭でも絶大な効果を発揮します。夫婦間での役割や責任が明確でなかったり、解釈に食い違いがあったりして生じる失望やいざこざも、[期待を明確にする」ことで解消できます。また、親子間で、家の手伝いや決まり事をきちんと守らせる際にも「期待を明確にする」ことは重要です。口頭の合意だけでなく、期待や求める結果を紙に書いておくと、時間と労力の浪費を減らし、信頼の環境を築くのに大いに役立ちます。

米国経営管理学会が行った調査によると、企業の非論理的行動の最大の原因は、非論理的期待にあるそうです。社員たちは期待を伝えられ、それを遂行する期限や予算を示されます。期限までに結果を出さなければならないというプレッシャーから、彼らは手抜きをするようになります。期待に応えようとして非論理的なことに手を出してしまうのです。

「期待を明確にする」という行動は、常に双方向の行動でなければなりません。どちらの視点から見ても無理のない現実的な期待を設定できるよう、社員たちの意見も聞く機会を設ける必要があります。

信頼を高めるヒント

「期待を明確にする」という行動のスイート・スポットをとらえるためは、「誠実さ」(期待を設定し、他者に正直に伝える)が必要です。また、関係者全員にとってのWinになるような期待を生み出す「意図」も不可欠です。合意内容を整理し、間違いなく実行するなどの「力量」、そして求める「結果」を関係者全員がわかるような方法で特定することも重要です。曲線の左端は、期待を十分に明確にしていない場合です。逆に右端は、あまりに細かすぎたり、途中で生じた調整に柔軟でなかったり、不信感が強すぎるといったことが考えられます。たとえば、婚前に財産契約を結ぶことで期待は明確になるかもしれませんが、その過程で信頼が損なわれる可能性も高くなります。

「グラフの最適化の鍵は、それぞれの行動を『信頼性の4つの核』の最も高いレベルで組み合わせることだ」とスティーブン・M・R・コヴィーはいいます。そうすることにより、行動を適切に応用するための判断力が最大化されて、信頼関係を支配する原則と調和できるのです。

それでは、「期待を明確にする」のに役立つ点を、具体的に紹介しましょう。

  • コミュニケーションでは、明快さが力になることを認識しよう。「明快さのチェック」として相手に次のような点を確認してみるとよい。
  1. 今の会話から何を理解しましたか。
  2. 会話の結果、あなた自身は次に何をすべきだと思いますか。私は何をすべきだとあなたは思いますか。
  3. 他の人たちは期待を明確に理解しているとあなたは思いますか。
  4. もっと明確にするためには、我々はどうしたらよいと思いますか。
  • 今度あなたが職場で何かのプロジェクトを手掛けるときは、明確なプロジェクト合意書を事前に作成するようにしよう。利害関係者全員で集まり、それぞれのアイデアや懸念を述べ合い、全員にとってWinになるような現実的かつ明確な合意を生み出すようにする。
  • 家庭においても、期待を明確にすることは重要となる。夫婦それぞれが結婚生活での大きな不満を3つずつ書き出し、個々の不満を見ながら「この中で、自分の期待が満たされていないものはどれだろうか」と自問する。不満や期待に関して何か思いついたことがあれば話し合い、より明確にする努力を一緒にしていく。

まとめ

「期待を明確にする」とは、自分が期待していることを相手に明らかにし、話し合い、確認すること。必要かつ可能ならば話し合って期待を見直すことなど。
根底にある原則は明快さ、責任、アカウンタビリティである。
逆の行動は、期待を曖昧にしておくこと、勝手な憶測で期待が共有されていると思い込むこと。
偽りの行動は、巧妙にごまかすことなど。

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