今回は「信頼されるリーダーの13の行動」の7番目、「より上を目指す」です。
それでは初めに、あなたの現状を評価してみましょう。あなたが、自分の能力を磨き、成長していれば10点、逆に現状維持にとどまっていたり、過去の栄光にあぐらをかいていたりするほど0点に近くなります。自分の言動を振り返って、点数をつけてください。
行動 |
逆の行動、偽りの行動 |
現在の成績 |
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より上を目指す |
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/10点 |
「より上を目指す」とは
私たちは今日、非常に変化の激しい時代に生きています。それだけでなく、技術革新、グローバル化、知識経済などの影響によってビジネスの難易度が高まり、状況は日に日に困難になっているのが現状です。昔からあるスキルだけに頼っていては、取り残されてしまいます。
競争や変化のスピードが激しさを増している中では、自分の能力を大幅に向上させ、常に進化し続ける必要があります。つまり、本当に信頼されるのは、常に「より上を目指す」リーダーであるということになります。
「より上を目指す」という行動は、継続的改善、学習、そして変革の原則に基づくものです。「結果を出す」と同様に、「信頼性の4つの核」の3番目に挙げた「力量」が強力なポイントとなるでしょう。あなた個人、またはあなたの組織が、他者から「学習し、成長、再生している」と見られると、変化の多い環境でも成功できる人(組織)と見なされ、信頼されるようになります。
「より上を目指す」の逆の行動は、退化、悪化、過去の栄光にあぐらをかくこと、世の中の動きに適合できないこと、などです。めまぐるしいスピードで変化する今のビジネスシーンでは、「より上を目指す」努力を意識的に行わないでいると、元の水準にとどまるのではなく、急速な変化についていっている周囲の人々よりもどんどん遅れをとることになります。つまり、単なる現状維持では、信頼を維持するどころか、かえって低下させてしまうのです。
「より上を目指す」という行動には、一般的に偽りの行動が2つあります。1つは、万年学生で、勉強には余念がないけれど結果を全く出さない人です。もう1つは、何でも自分の得意な領域に無理やりはめ込もうとする行為です。過去に大きな成功を収めた企画、営業方法などを持っている人は、その成功体験に縛られやすくなりがちです。そのときとは違う相手、違う状況でも、「あのときはこの方法で成功したから、今回もまたあの成功パターンにはめ込んだら大丈夫だろう」と考え、安易に答えを出してしまうからです。そういうことが続くと、より上を目指して新しい方法を見つけることが、いっそう困難になっていきます。
「より上を目指す」には
「より上を目指す」には、「フィードバックを求める」と「間違いから学ぶ」の2つの方法が有効です。
(1)フィードバックを求める
フィードバックを求め、それを効果的に利用することは、企業にとっても、個人にとっても改善に欠かせません。フィードバックをしっかり求め、それに従って行動することは、学習を通じて成長する革新的企業であることの証しといえます。
個人についていえば、弊社が提供している「360°フィードバック・ツール」の利用者は、自分の強みや弱みについて、自分の見方と他者の見方を比較したり、時には他者の意見を聞くことで、自分のパラダイムを再構築する必要性を痛感し、望ましい変革への道筋をつけていきます。どのような言動がその相手と共有する信頼口座への預け入れになるかを知る上で、フィードバックを受けることは非常に有効な方法なのです。
また、受け取ったフィードバックを実践の中でどう活かしていくのか、あなた自身の考えを周囲に示す必要もあります。提供した意見をあなたが真剣に受け止めていることを知れば、フィードバックを与えた人にあなたが成長と変革を志していることが伝わりますし、その人はあなたを信頼するようになるはずです。
(2)間違いから学ぶ
人は、失敗や世間体を気にするあまり、間違いを犯すことに対して逃げ腰になりがちです。しかし、間違いを犯すことを恐れていては、進歩は望めません。優秀な人や企業は、間違いは人生に付き物と割り切っているものです。間違いというものを改善に役立つフィードバックであるととらえ、間違いから学ぶ技術を身につけているのです。
実際に、世界クラスの企業では、飛躍的進歩やその手掛かりは、失敗から生まれることが多いと考えているようです。以下に、偉大な成果をあげた偉人の言葉を挙げておきましょう。
「私は何ヶ月も何年も考えに考え抜く。それでも100回のうち99回まで、私の結論は間違っている。100回目でようやく正解にたどり着く」 -アルバート・アインシュタイン
「私は1万回失敗したのではない。うまくいかない方法を1万通り見つけて排除したのだ」 -トーマス・エジソン
「成功は、失敗と反省の繰り返しによってのみ手に入れることができる。成功とは仕事の1%であり、それは、失敗ともいうべき99%の仕事によってもたらされる」 -本田宗一郎
信頼を高めるヒント
「より上を目指す」という行動を効果的に行うには、「信頼性の4つの核」のすべてが関係します。あなたが改善を決意し、それを実行するための「誠実さ」と、相手にもっと貢献できるようになるという「意図」があれば、あなたの行動はスイート・スポットをとらえているといえるでしょう。
当然、「力量」も関係してくることになります。これには、重要な目標を設定して達成する力の他に、信頼を築き、育て、与え、回復する能力も含まれます。
さらに「結果」です。できるだけ効率的に上を目指し、改善点と達成目標の関係を検証する上で必要になるものです。
「グラフの最適化の鍵は、それぞれの行動を『信頼性の4つの核』の最も高いレベルで組み合わせることだ」とスティーブン・M・R・コヴィーはいいます。そうすることにより、行動を応用する判断力が最大化されて、信頼関係を支配する原則と調和するようになるのです。それでは、「より上を目指す」のに役立つ点を、具体的に紹介しましょう。
あなたの部下、顧客、チームメンバー、家族たちに次の3つの質問をする。
- 我々が今していることで、今後も続けるべきだと思うことはどれですか。
- 我々が今していることで、やめるべきだと思うことはどれですか。
- 我々が今していないことで、始めるべきだと思うことが何かありますか。
回答に感謝するとともに、あなたがこれから実行しようと思うことを説明し、さらに進捗状況を報告する。
- 今度あなたが間違いを犯したときは、くよくよ悩んだりせず、それをフィードバックととらえる。そこから教訓を見つけ出し、次回は間違いをしないような方法を考えよう。
- あなたがチーム内、または家族内のリーダーならば、間違いを犯すことを恐れなくてもよい環境をつくる。適度なリスク・テイキングと失敗から学ぶ姿勢の有効性を周囲の人に伝えることで、高い信頼、相乗効果、生産性の確立を目指そう。
まとめ
「より上を目指す」とは、継続的改善や学習に努めて「力量」を高めること、フィードバックを受け入れ行動に活かすこと。自分の能力を絶対視したり、今の知識やスキルだけで将来の課題に対処できると思ってはいけない。
根底にある原則は、継続的改善、学習、変革である。逆の行動は、退化、悪化、過去の栄光にあぐらをかくことなど。偽りの行動は、勉強に余念がないが結果を出さないことと、何でも自分の得意な領域にはめ込もうとすること。