今回からは、前回紹介した「信頼の5つの波」を順々に説明していきます。まずは「自分自身の信頼」についてです。
「信頼されたければ信頼性のある人間になることである」
『7つの習慣 成功には原則があった!』の著者、スティーブン・R・コヴィーはこのように述べました。ここでコヴィー博士のいう「信頼性」というのは、「信頼される人柄」と捉えればよいでしょう。他人に信頼されるには、それ相応の器が必要というわけです。
しかし一概に信頼される人といっても、漠然としすぎていてわかりづらいといえるでしょう。コヴィー博士は信頼性を構成する要素として「人格」と「能力」を挙げました。彼はこの概念を説明するにあたって、歯医者の話を例に挙げます。
あなたはある朝起きると歯がズキズキ痛みました。これは意を決して歯医者に行かなければなりません。あなたの近所には2軒の歯医者があり、どちらも評判です。簡単に両者をご紹介しましょう。
片方は、腕がとてもいい歯科医師なのですが、お医者さんは無愛想、いやむしろ感じの悪い人なのです。また、料金も異様に高く、領収書に書かれた請求の内訳をきちんと確認しないお客さんには、施していない処置まで請求するという有様です。抗議しようものなら、「次からは来ないでくれ」と言われるのだそうです。
もう片方は、とても温厚なお医者さんと助手がやっている歯医者です。値段も良心的、料金体系や処方箋の説明は十分で、こういった観点からは大きな信頼を得ています。しかし腕のほうに関しては、あまりいい噂を聞きません。先日とうとう医療ミスが起きたという噂を、この間耳にしたところです。
さて、あなたならどちらの歯医者に行くでしょう。正直なところ、どちらも行きたくないのではないでしょうか。
このように、いくら能力があろうとも人格が十分でない人は信頼を得ることはできません。前者の歯医者がまさにこの典型といえます。その逆も然りで、人格が素晴らしくても能力が十分でない人も、信頼を得ることはありません。両方を伸ばしていくことが求められるのです。
この話は歯医者に限ったことではありません。あなた自身にももちろん当てはまります。あなたがオフィスでどんなに仕事を素早く、的確にこなすことができたとしても、部下を顎で使うような、周囲への気遣いを怠る人物であったとしたならば、信頼を得ることはできないでしょう。逆も然りですね。
人格と能力の両方を伸ばす必要があるということはご理解いただけたでしょう。次回はどのようにしてこれらの要素を伸ばしていくかについて考えていこうと思います。
あなたの周囲で、信頼できる人、もしくは周囲からの信頼を得ている人を1人想定してください。その人の人格と能力は、どちらが秀でているでしょうか。もしくは両方とも素晴らしいでしょうか。
あなた自身において、どちらかといえば欠乏していると思うのはどちらでしょうか。どちらかが自信のあるレベルでないならば、どのようにしてそれらを伸ばしていくことが考えられますか?