信頼に対してありがちな見られ方をいくつか紹介します。あなたはこのうちいくつが信頼に当てはまると思いますか。
□誠実さがあれば信頼は築かれる
□信頼は主観的なものである
□信頼は効果を発揮するまでに時間がかかる
□信頼というのは得ようとして得られるものではない
□ひとたび失った信頼は取り戻せない
□信頼は教えられるものではない
□人を信頼するのは大きなリスクを伴う
□信頼は一度に1人ずつ確立される
これらの説明を紹介すると、いくつかは信頼に当てはまるものだと思われがちですが、スティーブン・M・R・コヴィーは、これらはすべて誤解だと説明しています。
●誠実さがあれば信頼は築かれる?
あなたの信頼する人を1人思い浮かべてください。その人には誠実さがありますか。おそらく誠実さがあるのではないかと思います。信頼される人のほとんどが誠実な人です。しかしここで考えるべきは、誠実さだけが信頼に必要なのかということです。
歯医者を思い浮かべてください。あなたはこの街にごく最近越してきた住人で、大して街のこと知らないとします。数ヶ月してあなたは歯医者に行かなくてはならなくなりました。そこで近所の住人に評判を尋ねたところ、2人の歯科医を紹介されました。以下の描写の通りです。あなたは次のうちどちらの歯医者を訪れますか。
A歯科医:誠実さの塊で、息子の通う小学校のPTAも務める。患者の話を最後まで聞き、診察料も良心的。決して過剰なサービスをせず、金儲け主義の歯科医ではない。しかし腕に難があり、症状を悪化させてしまい、大都市の大学病院を紹介される患者がごくまれにいるらしい。
B歯科医:技術面では全国でも有数の歯科医。数々の国際的なコンクールで入賞を果たすほど。どんな治療にも痛みを伴わず、しかも短期間で終わることで知られている。しかし人格面に難があり、基本的に高額を請求される。家族との関係も上手く行っていないらしい。
あなたはどちらの歯科医を選択しますか。理由も教えてください。
いかがでしょう。誠実さに代表される人格面での成熟だけでは、決して信頼に足るとはいえないとおわかりいただけたことと思います。では人格の他にどういった要素が必要なのか。スティーブン・M・R・コヴィーは「人格と能力の両方がそろわなければ信頼は生まれない」と述べています。
ビジネスでの光景を思い浮かべればわかるはずです。あなたがプロジェクトを部下の誰かに任せたいというときに、人格的な側面は当然配慮するはずです。ましてやそのプロジェクトが外部との交渉を持つものであったとすれば、プロジェクトを託した部下が無礼を働いた場合、あなたと外部との関係も雲行きが怪しくなります。
しかし、同じくらい考慮するであろうものが能力です。その部下の能力は、プロジェクトに求められているものを満たしているか、そういった方面で実績は十分に上がっているか。少しくらいの能力の不足は、部下にとっての大きなチャレンジとなり得ますが、大きく足りていないようであれば、任せることはできないでしょう。
以下の質問について考えてみてください。
あなたが信頼するビジネス・パーソンは、人格と能力の両方がそろっているでしょうか。人格の部分で思い当たるキーワードと、能力の部分で思い当たるキーワードをそれぞれ考えてみましょう。
あなたが信頼を今よりももっと得るためには、どちらの面を鍛えればよいのでしょうか。それはどのように伸ばせばよいと思われますか。