「スピード・オブ・トラスト」の著者であるスティーブン・M・R・コヴィーは、信頼があれば、税金をなくし、配当を増やすことができると言います。このことが一番よくわかるのが、第三の波にあたる組織の信頼かもしれません。信頼がある組織と、信頼がない組織では、その結果に大きな違いがあります。それでは、低い信頼しかない組織にはびこる税金から見ていきましょう。
低い信頼しかない組織が支払わされる7種類の税金
組織内の信頼が低いために発生するコストや時間は、「信頼税」として決算書には表れなくても、他の問題に姿を変えて存在しています。
- 無用な重複:統制を目的とした過剰な階級組織、管理階層、重なり合う体制など
- 官僚主義:煩雑な規則、手続き、プロセス、何段階もの承認、煩雑な事務作業など
- 権力争い:権力を握るための情報の抱え込み、内輪もめ、本音を隠す、非公式な会議など
- 参加放棄:解雇されない程度に働き、自分の才能や情熱は発揮しない
- 離職:成績の良い社員が高信頼環境を求めて離職すること
- 離反:顧客、仕入れ先、投資家など社員以外の利害関係者が離れていくこと
- 不正行為:完全な嘘、怠業、妨害など。
これらは、組織内に潜む代表的な間接税です。間接税を払っている組織のマネージャーや経営層は、人を信頼しないという特徴があります。目を光らせていないと部下はサボるに違いないとか、取引先は仕事の手を抜くに違いないといった考え方があるから、無用な重複や官僚主義が生まれるのです。
こういったマネージャー達の下で働く社員は、いつの間にかやる気を失って参加放棄するか、高信頼環境を求めて離職するという選択をすることになります。そして、このような会社が取引先からも遠ざけられるのは、もっともなことではないでしょうか。
ここであなたの組織を思い浮かべてみてください。信頼されていないことでどんな間接税が発生しているか考えてみましょう。
高信頼組織が手にする7種類の配当
低信頼の組織に7種類の税金が発生する一方で、高い信頼は組織や個人に配当をもたらします。組織に信頼があれば、すべての社員は自分が本来やるべき仕事に集中することができ、低信頼組織よりも少ないコストと短い時間で物事を成し遂げ、大きな利益を生み出すことができるのです。代表的な7種類の配当を見てみましょう。
- 価値の増加:株価と配当という株主価値と、顧客価値のこと
- 成長の加速:顧客の信頼が売上や利益を生み出し、会社を成長させる
- イノベーションの促進:情報の共有、誰が手柄をとるのか心配する必要がない、間違いを受け入れてもらえる雰囲気、協働の文化などによってイノベーションや創造性が活発化する
- 協調関係の改善:信頼は協働とチームワークに欠かせない
- 提携の強化:信頼に基づいた提携関係からは高配当を得ることができる
- 実行力の改善:組織の戦略を実行する力は、信頼によって大幅に強化される
- 忠誠心の強化:高信頼企業は、社員の定着率が高く、固定客が多く、仕入れ先との取引関係が長く、投資家の定着率が高い
あなたの組織ではどのような配当を受けていますか。高い信頼の配当の総額を考慮すれば、強い信頼関係、速いスピード、低いコスト、価値の増加の間に重要な間接的関係が存在するのは否定できないでしょう。どんな組織でも、無用の重複、官僚主義、参加放棄、権力争い、離職、離反、不正行為という税金を削減、あるいは完全になくせば、信頼口座や結果に好ましい変化がはっきりと表れるはずです。あなたの組織がより多くの配当を手にするためには、どのような点を改善するべきか考えてみましょう。
信頼がもたらすスピードほど速いものはありません。信頼がもたらす経済的効果ほど有益なものはありません。そして、組織の視点に立った時、組織内部の利害関係者との信頼構築という点に関して、これらの事実に議論の余地はありません。
信頼を真に築き、育て、与え、回復する能力は、新たなグローバル経済のリーダーに求められる主要な資質です。今いる組織を、信頼を築けるような組織にすることがあなたに課せられた最大の使命だと自覚してほしいと思います。そうすることで、組織内で起こることが何でもうまく運ぶようになるのですから。