ビジネス・パーソンのための信頼構築講座 第10回「信頼性の4つの核」(3) 力量

これまで「信頼性の4つの核」の第一の核である「誠実さ」と第二の核である「意図」について考えてみました。これら前半の2つは「信頼性の4つの核」の「人格」にあたります。後の2つは「能力」に関することであり、今回は第三の核の「力量」について考えていきましょう。

それではまず、力量について考えるにあたって、以下のワークに取り組んでください。それぞれの行において、あなたが左側の文章に近ければ1に近い値を、右側の文章に近ければ5に近い値をつけましょう。中間くらいならば3となります。

今の仕事は自分の資質を本当に発揮しているとは思えない。

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今の仕事は自分の資質と自分に与えられている機会がぴったりと一致している。

仕事を効果的に行うために必要な知識やスキルを十分に修得していない。

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自分の仕事に必要な知識やスキルを習得している。

仕事上あるいは仕事以外の分野の知識やスキルを高める時間がほとんどない。

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仕事においても仕事以外においても、知識やスキルに絶えず磨きをかけている。

自分の長所がよくわからない。短所を改善することの方に重点を置いている。

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自分の長所がわかっている。長所を効果的に活用することに最も重点を置いている。

現時点で、信頼関係をどう築けばよいかよくわからない。

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信頼関係を効果的に築き、高め、広げていくにはどうしたらよいかわかっている。それを実現するために意識的に取り組んでいる。

25点満点で合計はいくつでしたか? もちろん得点が高いほど、あなたの力量は高いものであり、自分の能力を高めようとしているといえます。

信頼性にかかわる力量とは、優れたパフォーマンスを生み出すための才能、スキル、知識、生産能力のことです。有能な人は他者から信頼されるのは明らかでしょう。技術革新やグローバル化がかつてない速さで進んでいる現在において、力量は特に重要な要素かもしれません。

個人、組織のどちらにとっても大事な点は、今持っている能力に加えて、信用を維持するために常に自分の能力を磨き続けなければならないということです。「力量」を考えるために、次の点を自問してみてください。

  • 信頼性を増し、他者に信頼されるのに有効な力量として、自分はどんなものを備えているか。
  • 周囲からの信頼に影響する力量の習得に関して、自分はどんな経験をしてきたか、または、してこなかったか。
  • 技術革新やグローバル化といった要素は、自分が現在持つ力量の適合性にどう影響しているか。
  • 現在持っている力量を向上することや、新しい能力を習得することについて、自分はどう考え、どんな手法で取り組んでいるか。

スティーブン・M・R・コヴィーは、著書『スピード・オブ・トラスト』の中で、力量を説明する際に考えるべき5つの要素を、それぞれの頭文字を並べて「TASKS」と呼んでいます。

1.才能(Talent)

あなたの長所や得意なことは何ですか。自分の才能を最大限に活用するにはどうしたらよいですか。

2.態度(Attitude)

仕事に対するあなたの態度はどうですか。よりよい結果をもたらすような、より生産的な態度やパラダイムを持っていますか。

3.スキル (Skill)

今どのようなスキルがあり、今後はどのようなスキルが必要ですか。スキルの継続的向上にどの程度努力していますか。

4.知識(Knowledge)

専門分野の知識はどの程度かです。常に最新知識を得るためにどんな努力をしていますか。

5.スタイル(Style)

問題や機会に取り組んだり、他者とかかわり合ったりする際の自分の現在のスタイルはどの程度効果的ですか。あなたの手法は、必要なことの達成を邪魔していませんか。どうしたらやり方を改善できますか。

ギャラップ社が大企業で働く社員を対象にした調査では、自分の長所が仕事に活かされていると感じているのは20%に過ぎませんでした。社員の8割が自分の才能を仕事に活かし切れていないと感じているいうのは残念な結果です。あなたが持って生まれた「TASKS」と、お金を稼ぎ、貢献し、結果を出す機会を、できるだけ調和させるように目指したいものです。

力量を高めるにはどうしたらいいのか考えてみましょう。スティーブン・M・Rコヴィーが紹介する、能力を向上させて信頼性を強化するのに有効な「促進手段」を3つ紹介します。

1.自分の強み(および目的)で勝負しよう

まずあなたの強みを知って、それを開発して活用する方法があります。それは、他者と効果的に協働することで、他者の強みで自分の弱みをカバーしてもらい、自分の強みで他者の弱みをカバーしてあげることです。また、自分の強みを上回るのが目的の強みです。たとえば、良心に突き動かされるときや、達成せざるを得ないと思う目的が存在するようなケースです。

2.適応力を持ち続けよう

今日の経済で成功するためには、高い学歴ではなく生涯にわたって学習を続けることが求められています。たとえば、早起きしてリーダーシップや組織行動などの本を読んだり、周囲からのフィードバックを素直に受け入れるといった飽くなき改善努力が、既に得ていた信頼感をさらに大きく広げたり、よい結果をもたらす、といったことにつながります。

3.自分の進む方向を見極めよう

マーケティングの専門家でもあるジャック・トラウトは「人は結局、目指す方向がはっきりしている人について行くのです」と述べています。自分が進むべき方向を知り、その能力と人格が結びつくと、強制されなくても自らの意志でついて行きたくなるような信頼性のあるリーダーが生まれます。

人格は普遍的であるのに対し、能力は状況によって求められるものが変わります。ただし、どんな状況でも共通して欠かせないのは「信頼力」です。信頼を築き、育て、与え、回復する力は個人の成功でも、リーダーシップを発揮する上でも欠かせないものです。信頼力の重要性を認識し、自分が持っている信頼力を把握するために、TASKSと照らし合わせ、次の点について自問してみてください。

  • 信頼力に関して、自分はどの程度才能に恵まれているか。誠実や善意などは自分の性分に合っているか。自ずと相互利益を追求しているか。どんな行動が人に信頼を抱かせるか知っていて、それを実行しているか。
  • 信頼力に関して自分はどんな態度をとっているか。信頼の必要性を認識し、尊重しているか。問題に取り組んだり、物事を成し遂げようとしたりする際に、信頼を築くような方法で行っているか。
  • 信頼を構築するスキルを備えているか。他者とのかかわりにおいて信頼を築くことを実践しているか。
  • 自分は信頼を築き、育て、与え、回復するためのどんな知識と考え方を持っているか。
  • 自分の行動や他者とのかかわり合いのスタイルは、信頼を生み出すようなものか。自分のスタイルは他者に信頼を与えているか。

次回は、「信頼性の4つの核」のうち、結果について考えましょう。

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