ビジネス・パーソンのための信頼構築講座 第29回「市場における信頼 ブランド価値を高める」

製品やサービスを販売する企業にとってブランドが重要であることは言うまでもありません。

へイ・グループは、社会的責任(誠実さ)、人材管理(意図)、イノベーション(力量)、財政的健全性および長期的投資(結果)など、評判を構成する9種類の特性、「リーダーシップ分野」に照らして世界的規模で企業を測定しました。

その結果、「世界で最も賞賛される企業」に選ばれたのはゼネラル・エレクトリック社で、同社にとっては8年間で6度目の栄誉でした。第2位は主に業績で得点を稼いだトヨタで、米国以外の企業としては史上最高のランクでした。

こうしたことがなぜ重要なのでしょうか。「評判」は「ブランド」と同義であり、「ブランド」は「市場の信頼」と同義だからです。そして、信頼は人々の行動に影響を与えます。ゴリンハリス社の2003年の調査では、次のような結果が出ています。

  • ある企業と取引を開始したり取引量を増やしたりするのは、その会社を信頼しているためだとする回答が39%を占める。
  • 取引を停止または縮小したり、競合他社に乗り換えたりするのは、その会社の信頼性に懸念が生じたためだとする回答が53%を占めた。
  • 信頼している会社については疑念が生じても好意的に解釈し、企業行動について見解を求める前に会社側の説明に耳を傾けたいとする回答が83%を占めた。

ハリス・インタラクティブ社が実施し、ウォール・ストリート・ジャーナル誌で発表された評判指数(RQ)という、2005年の調査があります。この調査では、米国で最も著名な企業60社がその評判に基づいて評価されました。2005年の第1位は、7年連続のジョンソン・エンド・ジョンソンでした。この会社は信頼の実績を長年にわたって確立しており、創業は120年前に遡ります。

イーベイの創業者ピエール・オミダイアは、イーベイを通じて得た最も重要な教訓は何かという問いにこう答えました。「1億3,500万の人々が赤の他人を信頼できることを知ったという、注目に値する事実です。それは信じ難い効果を生んでいます。人々は、自分で思っている以上に多くのものを共有しているのです」

では、ブランドはどうしたら構築できるでしょうか。また、ブランドを壊さないようにするにはどうすべきなのでしょうか。

それは、「信頼性の四つの核」と「信頼されるリーダーの13の行動」を組織と市場の両方のレベルに応用することです。

「信頼性の4つの核」を強化し、利害関係者に対して「信頼されるリーダーの13の行動」を実践すれば、組織のブランド価値は目に見えて増えます。この「核」と「行動」は市場で信頼を築く鍵となります。

  • 今度はあなたの「組織」の場合で考えてみましょう。「顧客」の視点に立ち、次の点を自問してください。自分のブランドは「誠実」と言えるか。我々には誠実という評判があるか。我々には社員が信じ、信頼できる価値観があるか。我々は厄介な問題にも勇気を持って迅速に取り組み、間違いを正直に認め、是正するという評判を市場で築いているか。
  • 自分のブランドは良い「意図」を実践しているか。我々は利益第一主義としか思われていないか、それとも真に心遣いを実行し、他者の成功に貢献しようとしていると見られているか。
  • 自分のブランドは「力量」を発揮しているか。人々は我が社の名前から、品質、優秀性、継続的改善、グローバル経済時代において適合性を維持するための変革能力を連想するだろうか。我々は信頼を築きながら目的を達成する能力があると見られているか。
  • 自分のブランドは「結果」を伴っているか。我々は約束を実現するという印象を人々に与えているか。我が社の名前から優れた実績が連想されるか。ベイン社のコンサルタント、フレデリック・ライクヘルドの言う究極の質問、「あなたはこのビジネスを友人に勧めるか?」に人々は「イエス」と答えるだろうか。

あなたのブランドや評判が思い通りのものでないならば、「信頼性の四つの核」を診断ツールとして用いることにより、投資が最大のリターンを生む分野と理由が明確になるでしょう。問題が人格(誠実さまたは意図)にあるのか、それとも能力(力量または結果)にあるのか見極めがつくと、今後の対策を考えやすくなるでしょう。

あなたの組織のパフォーマンスを「信頼されるリーダーの13の行動」で分析すると、さらに効果的な努力をすることが可能になります。これらの行動を顧客、仕入先、流通業者、投資家、地域社会といった外部利害関係者との関わり合いに応用すると、市場レベルで信頼を築くことができます。具定例で紹介しましょう。

率直に話す
ジョンソン・エンド・ジョンソン社は処方薬に関する消費者向け直接広告キャンペーン、「Direct to Consumer」を開発している。これにより情報を率直に伝え、消費者を教養ある大人として扱っている。ジョンソン・エンド・ジョンソンのブランドが評判指数リストで最高の評価を維持している理由の一つは、こうした率直なコミュニケーションにあると言える。
透明性を高める
イーベイのメグ・ホイットマンCEOとそのチームは、彼女の言う、インターネットの完全な開放性における「ダイナミックな自主規制経済」を主導している。ビジネスウィーク・オンライン誌によれば、イーベイは情報の統制や囲い込みを行なうのではなく、市民が「イーベイの世界におけるすべてのトレンド、すべての販売、すべての新しい法規」に完全にアクセスできるようにし、「そのシステムはどこまでも透明である」と指摘する。
まずは耳を傾ける
アイルランドで食料品ストアやショッピングモールの経営を手がけるスーパークイン社は、彼らの言うマルチ・チャネル「リスニング・システム」をもとに一大帝国を築いた。このシステムは、定期的な顧客パネル、顧客アンケート、正式な市場調査、全店舗に設置したサービスデスク、ロイヤルティ・プログラム参加者への直接の電話などで構成されている。スーパークインは顧客の声を聞くことにより、食の安全におけるパイオニアとして革新的な顧客サービスを提供するためのヒントを得る。この組織は、ずっと大規模なライバル企業を尻目に市場を席巻している。

アイルランドの「顧客サービス王」として知られるスーパークインのファーガル・クインCEOは言っている。「本当の意味の聞く能力というのは、数少ない真の形態の競争優位の一つです。人の話に耳を傾けることは、どんな立場の人間であれ、他者には任せられない行為なのです」

ただし、組織における信頼の原則は、自分自身の信頼が基盤となることを忘れないでください。私たちが組織に関する信頼の問題に取り組む前に、まず自問すべきことがあります。「自分の評判はどうなのか?」、「自分のブランドは何か?」、「自分は『歩く税金』か、それとも『歩く配当』か?」と。

まず自分自身の中に信頼感を築いてはじめて、組織内や市場においても信頼の構築が可能になるということを忘れないでください。

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