ビジネス・パーソンのための信頼構築講座 第14回「信頼されるリーダーの13の行動」(2)他者を尊重する

今回は「信頼されるリーダーの13の行動」の2番目、「他者を尊重する」です。「他者を尊重する」とは、どういうことなのでしょうか。重要な要素が2つあって、1つは相手に敬意を示すことであり、もう1つは心遣いや思いやりを示すことだと、スティーブン・M・R・コヴィーは著書の『スピード・オブ・トラスト』で語っています。もう少し具体的にいうと、感謝の気持ちを表すとか、相手の気持ちや立場を考えるとか、相手が大切にしていることを同じように大切にするといったことになります。

それでは初めに、あなたの現状を評価してみましょう。あなたが、常に率直に話していれば10点、逆の行動や偽りの行動が多ければ多いほど0点に近くなります。自分の言動を振り返って、点数をつけてください。

行動

逆の行動、偽りの行動

現在の成績

他者を尊重する

  • 思いやりや、心遣いを示さない。
  • 失礼な態度をとったり、自分に何かをしてくれる人だけに敬意を払う

/10点

他者を尊重する行動は、尊敬、公正、親切、愛、礼儀の原則に基づいています。ただし、最も重要な原則は、個人に内在する価値、すなわち一個人としての重要性です。自分がしてほしいように相手に接することは、人間関係の基本であり、世界のあらゆる文化や宗教が認めている黄金律だといえます。

「他者を尊重する」の逆の行動は、「他者を軽視する」です。また、相手に思いやりを示さないことも逆の行動です。他者の気持ちや価値観を顧ない人は、職場でも家庭でもたいてい人を見下し、失礼な態度をとって信頼を失います。

「他者を尊重する」の偽りの行動はまず、敬意や思いやりを示すふりをすることです。しかし、それ以上に油断してはいけないのが、自分のために何かをしてくれる特定の人だけに敬意や思いやりを示すことです。相手によって態度を変える行動は「ウェイター・ルール」と呼ばれ、レストランでウェイターに接する態度によって、その人の人格的な成熟度がわかるというものです。レストランに限らず、店員さんに尊大な態度をとる方を見かけることがあります。また、上司には敬意を示すけれど、部下や自分の意見に異を唱える人には冷たいといったように、ポジションで人を判断するのもこれに当たります。

「他者を尊重する」という行動は、人によっては弱気な態度という印象を持つかもしれませんが、実は信頼やスピードやコストに直接影響しているのです。ある調査では、会社に大切にされていると思っている社員は42%に過ぎないという結果が出ています。この数字からは、知識労働者の時代になっても、依然として人をモノとして扱う産業時代の考え方から抜け出せていない経営者やリーダーがいかに多いかがわかると思います。大事にされていないと感じている社員が、どうして仕事に全力を尽くしたり、創造力を発揮したり、自発的に協働したりできるでしょうか。

シロタ・サーベイ・インテリジェンス社は、他者への尊重は士気がずば抜けて高い組織の主要な特徴の1つであるとし、上位10%の組織においては、一般社員が上級管理者と同じ扱いを受けていると指摘しています。「他者を尊重する」ことは、よりよい人間関係を築くだけでなく、よりよいビジネスの行い方として、優秀な組織を確立するための大きな注目点になってきているのです。

「他者を尊重する」という行動をグラフに当てはめてみると、曲線の左側(思いやりをほとんど示さない行動)は、謙虚さの不足、過剰なエゴや思いやりの欠如、あるいは思いやりや敬意の示し方がわからないことなどに原因があります。逆に、右側の度を過ぎた行動は、過保護、嫉妬、迎合などになり、過度の責任の引き受けや相手の利益を推測した身勝手な行動などによるものです。

小さなことが信頼口座に意外にも大きな効果をもたらすものですが、家庭においては、この「小さなこと」がことさら大切になります。「お願いね」や「ありがとう」の一言、相手の話に誠意をもって耳を傾けること、みんなが気持ちよく使えるように共有スペースをきれいにしておく心配りなどは、家族の信頼口座において多額の預け入れになります。逆に、こういったことを日々怠っていると、失礼な態度が当たり前になり、家族間で責任の押しつけ合いや絶え間ない批判合戦が生じてしまいます。そうなると、週に1日だけ「他者を尊重する」行動をしても、失った信頼を取り戻すことは難しくなってしまいますから、毎日少しずつ預け入れの行動を行うことが必要なのです。

信頼を高めるヒント

グラフの最適化の鍵は、それぞれの行動を「信頼性の四つの核」の最も高いレベルで組み合わせることだと、スティーブン・M・R・コヴィーはいいます。そうすることにより、行動を応用する判断力が最大化されて、信頼関係を支配する原則と調和するようになるのです。それでは、「他者を尊重する」能力を向上させる上で注意するべき点を、具体的に紹介しましょう。

  • 職場や家庭において自分が人にどのような態度をとっているか、ウェイター・ルールに照らし合わせて考えてみよう。あなたは現実に満足しているだろうか。もし不満を感じていたら、意図を改善する努力をしよう。
  • 相手に思いやりを示すために何ができるか、具体的に考えてみよう。電話をかけたり、礼状などで謝意を表したり、お見舞いのメールを送ったりといったことが思い浮かぶだろう。人が喜ぶことを毎日してみよう。たとえその相手が、あなたが働くビルの清掃係であってもだ。あなたの気持ちと行動を一致させることが大切なのだ。
  • 今ある人間関係を当たり前だと思ってはいけない。夫婦や恋人、家族や友人との関係は特にそうである。相手は自分の気持ちをわかってくれているとつい思い込み、別の人間関係にエネルギーを割きすぎるのはよくない。新しい関係より今ある関係こそ、思いやりを示すことが必要ではないだろうか。

まとめ

「他者を尊重する」とは、すべての人に敬意と思いやりを示すこと。

根底にある原則は、尊敬、公正、親切、愛、礼儀、個人に内在する価値観である。

逆の行動は、他者を軽視すること。

偽りの行動は、敬意や思いやりを示すふりをすること、特定の相手だけに敬意や思いやりを示すこと。

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