ビジネス・パーソンのための信頼構築講座 第13回「信頼されるリーダーの13の行動」(1)率直に話す

前回は、「信頼されるリーダーの13の行動」の概略を説明しました。13の行動は、信頼関係を支配する原則に基づいているため、信頼構築に非常に効果があります。それぞれを理解し、生活や仕事において活用すれば、強い信頼関係を築いたり、失った信頼の回復に威力を発揮したりできると思います。それでは、今回から「信頼されるリーダーの13の行動」を1つひとつ見ていくことにしましょう。まず1つ目の行動は、「率直に話す」です。

皆さんも、私生活や仕事上で、「思惑を明らかにしてくれたらいいのに」とか、「自分にはそれを受け止める心構えができているのに、どうして正直に話してくれないのだろう」などと思った経験があると思います。率直に話すという行為は、簡単そうに見えて、実は多くの人にとって難しいことなのかもしれません。

それでは初めに、あなたの現状を評価してみましょう。あなたが、常に率直に話していれば10点、逆の行動や偽りの行動が多ければ多いほど0点に近くなります。自分の言動を振り返って、点数をつけてください。

行動

逆の行動、偽りの行動

現在の成績

率直に話す

  • 嘘をつく でっち上げる
  • 一部だけ真実を話す
  • はぐらかす お世辞を言う

/10点

では、「率直に話す」とは、どういうことなのでしょうか。スティーブン・M・R・コヴィー著『スピード・オブ・トラスト』では、正直に行動することであり、「真実を話すこと」と、「正しい印象を与える」という2つのことを意味すると説明しています。信頼を築くためには、ただ真実を話すだけではなく、間違った印象を与えないように、考えを明確に伝えて誤解されないようにすることも大切なのです。

「率直に話す」の逆の行動は、嘘をついたり、騙したりすることです。しかし、こういうことをあからさまにする人はあまりいないでしょうから、注意すべきは、むしろ偽りの行為かもしれません。偽りの行動は、遠回しな言い方、情報の抱え込み、二枚舌、お世辞、場や人に適当に合わせる、でっち上げなど、率直に話す「ふり」をすることです。こうした行為は確実に信頼を低下させます。

マーサー・マネジメント・コンサルティング社が2005年に行った調査で、上司を正直だと感じている社員は40%に過ぎないという驚くべき結果が出ました。つまり、10人中6人の部下は上司の言葉に疑念を抱いているということになります。あなたが働く組織ではいかがでしょうか。表向きは信頼関係にあるように見えていても、実は信頼していない、あるいは信頼されていない関係があるかもしれません。

こういうことが横行すると、組織内での信頼は急激に低下していきます。部下は上司の指示をきかなくなり、情報を隠したり、1つで済むはずの会議が3つの会議に増えたり、上司の本音を探るために時間を費やすといった、余計な時間や労力を使わなければならなくなります。まさに低信頼税を生み出してしまうのです。

「率直に話す」という行動もやりすぎてしまうと、足りない場合のように低信頼税を生み出します。たとえば、「率直に話す」という名目で、言葉を選ばずに夫婦喧嘩をしたり、本人のいないところで他者を非難することは、正しい行動とはいえません。グラフの曲線の「スイート・スポット」を外さないようにすることが大切です。その判断力は、勇気(誠実)と、真の相互利益を目指す思惑(意図)と、状況に真っ向から取り組む力(力量)と、信頼構築を重視する姿勢(結果)からなる「信頼性の4つの核」によってもたらされます。

「率直に話す」ことは、組織に限らず、友人や家族といった親しい関係でも重要です。特にこうした親密な関係では、話し合いの際に、まず自分の意図を明確に示すと効果的です。これを踏まえて、家庭で率直に話すことの具体例を見てみましょう。

・薬物、友人選び、セックスなど、難しい問題に直面しても、親が子どもの指導やサポートを率直かつ明確に行う。

・子どもの躾、親戚のこと、お金の問題などについても、夫婦がお互いの考えや気持ちを配慮しながら意見を述べ合い、Win-Winの解決策を見つける努力をする。

・家族間で無神経さや思いやりのなさを互いに非難し合ったりするのではなく、「本当はあなたに気づいてほしかったんだけど、今回は私がしておいたからね」などと言えるようになる。

親しい関係では、「あえて言わなくても、相手は私が考えていることくらい、わかっているだろう」とつい考えてしまうこともあるでしょう。特に、言いにくいことや、聞きにくいことがある場合は、言葉ではなく空気を読む力に頼りたくなるものですが、率直に話すことがあなたにとって一番大切な人たちとの関係にどんな大きな効果をもたらすかもう一度よく考えてみてください。

信頼を高めるヒント

グラフの最適化の鍵は、それぞれの行動を「信頼性の4つの核」の最も高いレベルで組み合わせることだと、スティーブン・M・R・コヴィーは述べています。そうすることにより、行動を応用する判断力が最大化されて、信頼関係を支配する原則と調和するようになるのです。「率直に話す」能力を向上させる上で注意するべき点を、具体的に紹介します。

・なぜ率直に話すことができないのか、その原因を考えてみましょう。結果や苦痛を恐れているためか。それとも、自分が間違っているかもしれないこと、あるいは相手の感情を傷つけることを恐れているのか。人気取りや勇気のなさによるものか。率直に話すことがない環境で生活したり、働いたりしているためか。正直かつ率直であることによって得られる配当と、率直に話さないことによって支払うことになるコストを見極めましょう。

・自分がしている会話に注意を払いましょう。会話の合間に、自分は率直に話しているか、それとも都合のよい解釈をしているか、自問してみましょう。もし都合のよい解釈をしているとすれば、その理由を考え、自分はそれで税金を支払っていることを自覚し、誠実さと意図を改善することです。

・長々とした前置きはやめて、すぐに本題に入りましょう。少ない言葉のほうが効果が大きい場合は多いものです。率直に話す訓練をすれば、正確で無駄のない言葉が身につき、都合のよい解釈をしなくなるでしょう。

・他者に協力を求めましょう。周囲の人に、「私は率直な話し方ができるようになりたいと思っています。あなたとお話ししているとき、何か気づいた点があったら教えてもらえませんか?」と言って、改善の協力をお願いしてみましょう。

まとめ

「率直に話す」とは、正直に真実を話すこと。

根底にある原則は、誠実、正直、そして率直さである。

逆の行動は、嘘をついたり騙したりすること。

偽りの行動は、遠回しな言い方、情報の抱え込み、二枚舌、でっち上げなど。

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