ビジネス・パーソンのための信頼構築講座 第9回「信頼性の4つの核」(2) 意図

前回は、「信頼性の4つの核」の誠実さについて考えました。今回は第二の核である「意図」について考えていきましょう。

それではまず、意図について考えるにあたって、以下のワークに取り組んでください。それぞれの行において、あなたが左側の文章に近ければ1に近い値を、右側の文章に近ければ5に近い値をつけましょう。中間くらいならば3となります。

身近な人以外、他者のことは全く気にかけない。自分が抱えている問題以外のことに関心を向けるのは難しい。

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他者を心から気遣い、他者の幸福に深く配慮している。

自分のとる行動の理由を深く考えない。自分の動機を高めるために、真剣に内省したことはほとんどない。

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自分の動機を意識し、正しい理由で正しいことができるよう、不純な動機を排除している。

他者とのやり取りの中で、たいてい自分が欲しいものを得ることだけに集中する。

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関係者全員にとってのWinとなる解決策を積極的に探す。

ほとんどの人は私の行動を見て、私が彼らの最善の利益を優先しているとは思わないだろう。

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他の人たちは私がやっていることを見て、私が彼らの最善の利益を優先していることがわかるはずだ。

正直言って、誰かが何かを手に入れると(資源やチャンス、信用など)これでもう自分には回ってこないと思ってしまう。

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資源やチャンス、信用などは、全員に行き渡ってもまだ余裕があるように思える。

25点満点で合計はいくつでしたか? もちろん得点が高いほど、あなたの意図は良いものであり、互いの利益を追求しようとしているといえます。

意図とは、何でしょうか。それは、人が持つ動機や思惑、その結果として表れる行動です。動機が率直で、相互利益に基づいていれば信頼関係が育ちます。自分のことだけでなく、上司や部下としてかかわる相手のことも心から気遣い、導き、あるいは奉仕することが大切なのです。何か思惑があるのではないかと疑ったり、こちらの最善の利益を考えて行動しているとは信じられなかったりすると、その人の行動すべてに疑念を抱くことになるのです。スティーブン・M・R・コヴィーは、著書『スピード・オブ・トラスト』の中で、意図を説明する際に次の3つに触れています。

1.動機

動機とは何かをする根拠や理由のことです。その中でも最も信頼を得られるのは、他者への心遣いや、目的についての心遣いなど真の心遣いです。

2.思惑

思惑は動機から生まれ、何をしようと思うか、どう進めようとするかということです。そして、最も信頼を与える思惑は、お互いの利益を追求しようとすることです。

3.行動

行動というのは一般的に、動機や思惑が具現化したものです。他者への気遣いや思惑が本心であることを実際の行動で実証しなければ、信頼を得ることはできません。

人は互いに目に見える行動で相手を判断するということを覚えておく必要があり、逆に自分の動機や思惑が正確に行動に反映されるように最大の注意を払わなければなりません。私たちは、他者の行動を自分の意図に勝手に当てはめて解釈してしまいやすいものです。しかし、強い信頼関係を築くためには、その人の行動だけで判断したり、勝手に意図を解釈したりせずに、その人およびその人の善意に対する自分の信頼を確認しようとする姿勢が大切です。

次に、意図を改善するにはどうしたらいいのか考えてみましょう。意図そのものに問題がある人は、他者の利益よりも自分の利益、地位、財産を求めます。これは基本的に心の問題ですが、努力して改善することができます。また、多くの人は抱えるのは、善意を持っていながら、その表現方法や実行の仕方が上手ではないという問題です。たとえば、善意でありながら思惑を秘めて何かをしようとした結果、他者の目には隠し事をしているように見えるといったことです。そこで、意図を改善するのに有効な「促進手段」を3つ紹介します。

1.動機を改善しよう

確かに善意のときもありますが、理屈をつけて、つまり自分に都合のいい嘘をついて自分の意図を自身や他者に正当化しようとするときもあります。そういった動機を改善するためには、一番深いレベルまで降りて自分の動機を見つめ直す必要があります。次のような自己分析的な自問を定期的に行うことが効果的な方法です。

・子どもとの関係について

自分の行為は真の心遣いや愛情から出たものか。
もし自分が間違っていたら、それを認める謙虚さを持ち合わせているか。

・夫/妻との関係について

自分は相手の言い分に心から耳を傾けているか。
相手の気持ちを理解しているか、それとも自分の考えを説明することだけにとらわれているか。

・職場のチームとの関係について

自分はチームメンバーの1人ひとりの貢献を正しく認めて評価しているか。
チームの成功を大切に考えているか、それとも自分個人の成功を求め、自分が認められることに目が行っていないか。

・仕事上の取り引きについて

自分はお互いの最大の利益を追求しているか。
相手にとっての成功を本当に理解しているか。また、自分にとっての成功を十分に検討し、説明することができるか。
互いに協力する考え方や第三案を受け入れる意志があるか、それとも自分だけの成功を望んでいるか。

2.自分の意図を宣言しよう

意図を宣言して、思惑や動機を包み隠さず伝えることは、行動が他者から誤解されている場合や、新しい関係で信頼を築く手段として有効です。相手に意図を伝えておけば、相手が自分の行動を見たときにその意図に気づき、理解し、評価できるからです。

3.「豊かさ」を選択しよう

豊かさとは全員にとって十分な量があるということです。愛、成功、結果、信頼といった人生の重要な要素の大半は、豊かであることがさらなる増加を促進します。そして大切なことは、豊かさは私たちが選ぶことのできる1つの選択肢であるということです。意図を改善し、豊かさを生み出すために、以下の点を自問してみてください。

  • 自分は、お互いの利益になるような解決策を考え出せると信じて交渉しているか。それとも、心の底では相手が利益を手にしたら自分が損をすると考えているか。
  • 会議でいろいろな案について検討しているとき、全員の功績が十分に評価されると自分は信じているか。それとも、1人がそれを独占し、しかもそれが自分であったらと思っているか。
  • ものの見方はそれぞれであり、自分の見方が正しいとは限らないということを認められるか。
  • 自分の経済状態にかかわらず、他者と分かち合い、他者の利益をもたらすことができると信じているか。

次回は、「信頼性の4つの核」のうち、力量について考えましょう。

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