ビジネス・パーソンのための信頼構築講座 第11回「信頼性の4つの核」(4)結果

これまで「信頼性の4つの核」の第一の核である「誠実さ」、第二の核である「意図」、第三の核である「力量」について考えてみました。最後は「結果」です。結果は樹木で言えば果実のようなもので、最終的な産物です。他の3つの核があっても結果が出なければ、果実のならない木のようなもので、信頼性を生み出すことはできません。

それではまず、結果について考えるにあたって、まず、以下のワークに取り組んでください。それぞれの行において、あなたが左側の文章に近ければ1に近い値を、右側の文章に近ければ5に近い値をつけましょう。中間くらいならば3となります。

顕著な実績を残していない。私の実績には誰も感心しない。

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私の実績は、望む結果を出せる人間だという信頼を他者に与える。

指示されたことをやることに労力を注いでいる。

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活動することではなく、結果を出すことに労力を注いでいる。

自分の実績について何も言わないか(自慢していると思われたくない)、逆に実績をことさら並べ立て、周囲の人をうんざりさせてしまうかのどちらかだ。

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人々から信頼されるように、自分の実績を適切に伝えている。

やり始めたことを最後までやり通せないことがよくある。

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何かをやり始めたら、たいてい最後までやり遂げる。

どのようにして結果を得るかは考えない。結果を得ることしか考えない。

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常に信頼を得られる方法で結果を得ている。

25点満点で合計はいくつでしたか? もちろん得点が高いほど、他の3つの核を効果的に生かしてよい結果を生み出しているといえます。

結果は信頼性を生み出す上で、とても重要なものです。ジャック・ウェルチの言葉を借りれば、結果を出すということは、「成績証明書」を相手に提示するようなものなのです。「結果を出す人」「仕事ができる人」とみなされ、他者と信頼関係を築き、維持するのに役立ちます。「結果」を考えるために、次の点を自問してみてください。

  • 自分は今、どんな結果を出しているか。それらの結果は自分個人の信頼性を高めているか、それとも低下させているか。
  • 自分がもし誰かを雇うとしたら、その人の実績や目下の成績が自分の意思決定にどの程度影響するだろうか。
  • 自分自身の実績はどの水準にあるか。それを見た誰かが私を雇う可能性はどれくらいあるだろうか。
  • 望ましい結果を見極め、その実現に向けて効果的に行動することに、自分はどの程度長けているか。自分の仕事ぶりは人々に信頼感を抱かせるだろうか。

スティーブン・M・R・コヴィーは、著書『スピード・オブ・トラスト』の中で、結果を考える上で忘れてはならない2つのことを説明しています。

1.過去、現在、そして未来の結果

人は3つの尺度で評価するものです。1つは過去のパフォーマンスで、実績、評判、過去に行ったこと、すでに達成した結果などがこれにあたります。2つ目は現在のパフォーマンスで、今現在どれくらいの能力を発揮できているかということです。最後の3つ目は予想のパフォーマンスで、将来どんな働きをすると思うかです。過去の実績でいえば、「半世紀を超えるサービスの提供」といった実績を伝えて信頼感を抱かせる企業もあれば、短期間で素晴らしい結果を出すことにより予想以上の速さで信頼を確立するベンチャー企業もあることからもおわかりになるでしょう。

2.どんな結果をどんな方法で得るか

多くの人は「どんな結果」を得るかしか考えませんが、「どんな方法」で得るかは、結果と同じくらい重要です。これは個人、人間関係、チーム、組織、社会というあらゆるレベルに当てはまります。あなたが、チーム内に豊かさと協力の精神を築く方法で結果を求め、功績を全員で分かち合えるように気を配ったなら、次に同じような状況になったとき、あなたは同様に素晴らしい結果を手にし、しかも前よりも早く簡単にできるのではないでしょうか。

自分自身に対しても、また他者に対しても、信頼性を確立しようと思ったら、やはり結果が重要です。ではここで、結果を改善するにはどうしたらいいのか考えてみましょう。スティーブン・M・R・コヴィーが紹介する、能力を向上させて信頼性を強化するのに有効な「促進手段」を3つ紹介します。

1.結果に責任を持とう

成功の真の鍵は「何をしたか」ではなく、「どんな結果を出したか」です。下の表にある左右の言葉を見比べてください。

行動

結果

お客に電話で売り込んだ

実際に買ってもらった

授業を受けた

効果的なプレゼンテーションができるようになった

ダイエットを続けた

体重を6キロ近く減らした

結果に責任を持つという考え方には、結果とそのための行動を区別することのメリットに加えて、結果を達成することで信頼性が築かれるというメリットもあります。

2.成功できると信じよう

成功したいと思っていると、その実現の可能性が高まり、よい結果を得やすくなります。結果が改善されると信頼性や自信が強まり、それがより積極的な自己期待とさらに多くの成功をもたらし、上向きの循環が続くといわれています。それが自己達成予言です。結果を高めたいと思うならば、成功を信じて期待することが大切です。ただし、手段は選ばなければなりません。他者を踏み台にするのではなく、他者と力を合わせるのです。自分の成功を期待し、他者の成功も期待することは、実際に成功を手にする上で必要不可欠な手法なのです。

3.最後の一頑張りをしよう

結果とは要するにやり遂げることです。「始める人は多いが、やり遂げる人は少ない」という諺があるように、今日の社会は、挫折する人や形勢が困難になるとすぐに投げ出してしまう傾向が広がっているかもしれません。最後の一頑張りが、簡単に諦めてしまう風潮に対する強力な解毒剤となることは間違いありません。さらに、最後の一頑張りが、信頼性に与える効果はさらに大きなものなのです。

ここまで4回にわたって「信頼性の4つの核」、すなわち自分を信頼し、他者に信頼される人間になるための基本要素について見てきました。誠実さを高め、意図を改善することによって人格を築く方法、また力量を上げ、結果を改善することで能力を築く方法を考えてきました。

周囲の人とたちは、あなたの信頼性が4つの要素から成っていて、その要素ごとに高く評価されたり、低く評価されたりする可能性があることに気づいていません。その人に信頼性があるのかないのかという、全体しか見えていないのです。ですから、4つの核から信頼性が成り立っていることを理解し、自分自身の能力を把握し、改善するべき分野に集中してみてください。信頼感を与えるようにするにはどう振る舞えばよいか、その知恵を身につけることができると思います。

次回は、人間関係の信頼における「信頼されるリーダーの13の行動」に移ります。

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