今回は「信頼されるリーダーの13の行動」の6番目、「結果を出す」です。
前回までは、率直に話す、他者を尊重する、透明性を高める、間違いを正す、忠誠心を示す、といった人格に基づく行動を見てきましたが、ここからは能力に基づいた行動を取り上げます。
それでは初めに、あなたの現状を評価してみましょう。あなたが、普段から結果をちゃんと出していて、目標を成し遂げていれば10点、逆の行動や偽りの行動が多ければ多いほど0点に近くなります。自分の言動を振り返って、点数をつけてください。
行動 |
逆の行動、偽りの行動 |
現在の成績 |
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結果を出す |
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/10点 |
「結果を出す」とは
新しいクライアントと関係を築きたい場合、最短期間で信頼を築ける方法を1つ挙げるとすれば何でしょうか。それは「結果を出す」ことです。結果は、人に信頼性や信頼を直ちにもたらし、強い影響力を与えてくれます。あなたという人物が価値を生み出し、貢献する能力を備え、仕事ができることをはっきりと証明してくれるものなので、他者との間に信頼を築く強力な手段となります。
「結果を出す」という行動は、責任、アカウンタビリティ、そしてパフォーマンスの原則から生まれます。その逆の行動は、もちろん結果を出させないことです。偽りの行動は、結果ではなく、結果を実現する手段としての活動を生み出すことです。
魅力的なプレゼンを行い、素晴らしい結果を期待させるような約束をするけれど、いざとなると全く結果が出なかったり、出たとしても約束には遠く及ばない、といったケースは往々にしてあります。でも、本当に信頼される人は、言うことは地味でも、着実に結果を出す実行力を持っているものです。
仕事が責任をもって果たされた場合、また果たされなかった場合、いずれも信頼口座への影響は計り知れないものがあります。クライアントも結果を出して口座の残高を増やした相手に対しては、要求を認めてあげようという気持ちになるものです。逆に結果を出していないのに要求だけはしてくる相手の言うことに耳を傾けようと思う人は少ないでしょう。結果を出した人はそうでない人よりも、手にする選択の幅や融通性が広がります。それは家庭内でも職場でも同じです。
ジャックウェルチも次のように語っています。
(職場の)出退時間を部下の自由に任せることに上司は諸手を挙げて賛成する。ただし、それは部下が自分の成績と結果で勝ち取らなければならない。実は、仕事と私生活のバランスを本当に機能させるものは、かつてのポイント制度だと私は見ている。優れた成績を上げた者はポイントを貯め、それを融通性と交換できる。自分のポイントが多ければ多いほど、自分の好きな時に、好きな場所で、好きな方法で働ける可能性が増えるのだ。
いかがでしょうか。結果を出すという行動は、それ以外にも、反対派を味方につけるのに有効であり、また、新しい関係において信頼を素早く築いたり、失った信頼を速やかに回復したりするのにも効果があります。それくらい信頼構築において非常に重要な要素なのです。
「結果」を前もって示す
結果を出しているのに期待する反応が得られないという人が時々います。信頼口座に多額の預け入れをしていると思っていたのに、実際はわずかな金額だったり、マイナスだったりするケースです。それは大概、何を期待しているのか、事前にはっきりとさせておかなかったことが原因だと思われます。自分にとっては「とてもよい、素晴らしい、効果がある」結果だと考えたことが、相手にとっては「平凡、見当違い」な場合もあります。たとえば、ある父親は、子どもの学費やおもちゃを買うお金のために夜遅くまで懸命に働いて、たくさんの預け入れができたと思っていても、子どもが本当に求めているのは父親と共に過ごす時間だったりする場合です。また、製品開発チームが顧客は気にも留めない機能の開発に必死になるような場合もそうです。
このような食い違いが起きないようにするには、お互いが求める結果を事前に定義しておくことが必要です。
信頼を高めるヒント
「結果を出す」という行動においては、「信頼性の4つの核」の中でも能力に関する核がより強く作用します。下のグラフの曲線の左端は、期待に届かない結果の出し方で、「誠実さ」「力量」それにもちろん「結果」を強化する必要があります。そのためには前もって結果を定義するのが最も効果的な方法です。逆に右端は、結果は十分に出ているが、それが的を射たものであるかどうかが考えられていない状態です。(たとえば、上司が重要視していない仕事に注力する部下、子どもとの時間をつくらないで残業する親など)やはり、「誠実さ」(特に一貫性)、「力量」の調和、結果の定義などに向けて努力すると、曲線状のスイート・スポットに近づいたり、維持したりする上で大きな効果があります。
「グラフの最適化の鍵は、それぞれの行動を『信頼性の4つの核』の最も高いレベルで組み合わせることだ」とスティーブン・M・R・コヴィーはいいます。そうすることにより、行動に応用する判断力が最大化されて、信頼関係を支配する原則と調和できるようになるのです。それでは、「結果を出す」のに役立つ点を、具体的に紹介しましょう。
- 今度あなたが結果を出そうと思うときは、何が期待されているのかを徹底的に理解するようにしよう。自分ではよい結果だと思って実現させても、評価されるとは限らない。真の信頼関係を築きたいと思ったら、相手が求める「結果」が何なのか知る必要がある。
- 今度あなたが「結果を出す」と約束するときは、果たしてその約束が現実的なものか慎重に考えよう。大風呂敷を広げておいて期待に達しなければ、そのつど信頼口座から引き出しを行う羽目になる。
- 顧客や同僚の期待を前もって予測し、要求される前に結果を出すようにしよう。期待を予測することにより、信頼口座への預け入れに配当を付け足すことができるはず。
まとめ
「結果を出す」とは、結果の実績を確立する、正しいことをやり抜く、自分に課された仕事を成し遂げる、無理な約束をして期待を裏切らない、結果を出せなかったときに言い訳しないこと。
根底にある原則は、責任、アカウンタビリティ、パフォーマンスである。
逆の行動は、成績が悪い、結果を出せない、など。
偽りの行動は、結果ではなく、結果を実現する手段としての活動を生み出すことなど。