ビジネス・パーソンのための信頼構築講座 第12回「信頼されるリーダーの13の行動」

今回より、「信頼の5つの波」のうち、第二の波にあたる「人間関係の信頼」について考えていきます。どのようにして他者との信頼関係を高め、「信頼に足る人物」になるかがここでのテーマです。

この波の根底にある原則は、「行動の一貫性」であり、それをマスターするために有効なのが「信頼されるリーダーの13の行動」です。これはスティーブン・M・R・コヴィーが世界中の信頼されるリーダーたちを分析した結果、彼らに共通する行動を13にまとめたものです。私生活であれ職場であれ、あらゆる人間関係において信頼を築くのに有効なスキルを、あなたが改善したい人間関係に役立ててください。

それではまず、行動について考えていきましょう。信頼構築において行動が重要であることは間違いありません。個人的関係でも仕事上の関係でも、人の行動というのは、言葉よりもはるかに大きな影響力を持っているからです。「私は結果を出せる人間です」と口で言うのは簡単ですが、それを行動で実証しなければ単なる嘘つきとみなされ信頼を失います。行動が伴わない言葉は、信頼を簡単に壊す力があるのです。

「信頼されるリーダーの13の行動」を実践するということは、ある意味、これまでの自分の行動を変えるということになります。私たちが、今まで慣れ親しんできた行動を変えることは可能なのでしょうか。スティーブン・M・R・コヴィーは『スピード・オブ・トラスト』の中で、こう語っています。

「行動は変えられない、という人もいる。だが、人は行動を変えることができ、そして、時には劇的なほどに行動を変えていること、また、それによって驚くべき効果が得られることを示す明確な根拠がある」

その例として、反イスラエルの行動を一変させて中東和平の流れを変えたアルワン・サダト氏や南アフリカのアパルトヘイトを非暴力、寛容、協力の精神で廃止させたネルソン・マンデラ氏を挙げています。さらに行動を変えるためのヒントとして、スティーブン・M・R・コヴィーはこうもいっています。

「行動を変える人と変えない人の違いは、抗えないほどの強い目的意識を持っているかどうかにある。信頼の構築を通じて結果を達成することを目的としていると、信頼を築くという行動がもはや単なる『すべきこと』ではなくなる。豊かで満足できる人間関係、協力と成果の共有、平凡な楽しみをよりいっそう享受するための強力な手段になるのだ」

ですから、行動を変えたいと思うならば、誰との信頼関係を築きたいのか、そのためにはどのような行動をすればいいのか、しっかりイメージすることから始めましょう。

信頼を築く行動を身につけようとする際に、「信頼口座」として定量化して考えてみるとわかりやすくなります。信頼を築くような行動をすれば口座に預け入れをすることになり、逆に信頼を壊す行動なら引き出しとなります。信頼口座は次のような事実を知る上でも有効です。

1.信頼口座は1つひとつに特徴がある
相手の年齢、性別、あなたとの関係、今現在の信頼度合などによって口座にはそれぞれに特徴があるものです。
2.預け入れや引き出しの額はいつも同じとは限らない
自分にとっては些細なことが相手には意外なほど大きな額になることがあります。それは預け入れにも、引き出しにも当てはまることです。
3.引き出しは通常、預け入れより多額になる
ウォーレン・バフェット氏が語っているように、「評判を確立するには20年かかるが、評判を壊すのは5分もかからない」のです。
4.手っ取り早く信頼を築くには、引き出しをやめるのが1つの方法である
信頼のレベルを引き上げるには、推進力の強化もさることながら、抑制力を取り除くことも必要です。アクセルとブレーキの両方を踏みながら運転するより、ブレーキから足を離したほうが車は速く走れるように。
5.人間関係ごとに2つの口座を持つ
信頼の量は自分の見方と他者の見方で異なる可能性があるため、口座が2つあるつもりで人間関係を考え、それぞれの口座の残高に注意を払わなければならないのです。

信頼口座を開いたら、「信頼されるリーダーの13の行動」を実践して、信頼を高めるように他者とかかわり、信頼を壊すようなかかわり合いをしないように行動する段階です。「信頼されるリーダーの13の行動」を実践すれば、私生活であれ職場であれ、あらゆる関係において信頼を築く能力が飛躍的に向上します。なぜそれほど強力なのでしょうか。それには次のような理由があります。

● 信頼関係を支配する原則に基づいている
一時的な流行やテクニックではなく、永続的な原則に基づいている
● 「信頼性の4つの核」から生み出される
人格面でも能力面でも個人の信頼性に基づき、見せかけの姿ではなく真の姿から流れ出る
● 実用的である
すぐにどこでも実践できる
● 普遍的である
あらゆる人間関係において実践でき、ビジネス・政治・教育など組織の種類も問わず、さまざまな文化への対応が可能

次回から、「信頼されるリーダーの13の行動」を1つずつ見ていきますが、それに先駆けて、その理解と実践に役立つ点を紹介します。

  1. 信頼されるリーダーの13の行動」はすべて、「信頼性の4つの核」の人格と能力の両方の要素が組み合わされる必要がある。最初の5つの行動は人格から生み出され、次の5つは能力から、そして最後の3つは人格と能力の両方を使って生まれます。
  2. 一度効果があると、ついそれをやり過ぎてしまいがちですが、度が過ぎると、せっかくの強みが弱みになってしまいます。それぞれの行動でちょうどいい「スイート・スポット」をとらえるようにしましょう。
  3. バランスをとるためには、13の行動を1つずつではなく、同時に実践する必要があります。
  4. それぞれの行動について、その根底にある原則と、それぞれの行動の逆と偽物も併せて紹介することで、引き出しの行動にも注目してもらいます。
  5. それぞれの行動についてヒント、つまりあなたの「信頼性の4つの核」を強化して「スイート・スポット」をとらえるためのアイデアや、応用方法といった具体的な提案を紹介します。

次回は、「信頼されるリーダーの13の行動」を」の行動その1、「率直に話す」について考えましょう。

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